初心者には長期投資がおすすめ
投資といって多くの人がイメージするのが1日中画面に張り付いて短期間で何度も取引を繰り返していくデイトレードですね。
投資をするならすぐにでも結果を出して手っ取り早くお金を増やしたいと思うのはもっともだと思います。
しかし、短期の投資は高度な知識や技術を要することが多く、精神面でも良くないので初心者にはおすすめできません。
投資は「何年後にどれくらいの利益を得たいのか」という目標によって投資のスタイルや金融商品が変わってきます。
なぜ初心者には長期投資が良いのか、それは次のような利点があるからです。
無理にリスクを取る必要がない
短期間で利益を得ようとすれば必然的に値動きの大きい(リスクが大きい)金融商品に張り付いていなければなりません。
逆に値動きが小さくて短期間で利益がでない金融商品も、長いスパンで見れば利益を得られることが多いです。
短期投資はギャンブルになりやすいです。短期間でお金を増やしたいからと無理にリスクをとってお金を減らしては意味がありません。
手数料が安くなる
短期間で取引を繰り返すと回数を重ねるほどに手数料がかかります。
長期運用ならば取引回数が少ないため、同じ利益幅でも手数料が少ない分有利になります。
時間がなくても大丈夫
短期取引では常に画面に張り付いて値動きを注視していなければなりません。
対して長期投資は1日1回、経済ニュースや値動きに異変はないかチェックするだけでOKです。忙しいサラリーマンでも安心です。
中には月1回しかチェックしないというツワモノもいます。
投資による複利効果
複利効果とは、運用で得た利益を再投資することで、利息が利息を生んでふくらんでいく効果のことです。つまり、元本と利息を合わせた金額に利子がつくということです。
対して、利息を再投資しない場合は元本だけに利子がつきます。これを「単利」といいます。
投資信託などには利息を受け取るタイプと、利息を再投資するタイプがあります。配当金を受け取るタイプは毎回お金を受け取っているのだからお得な気がしますよね。実際はどちらが有利なのでしょうか。
100万円を年利5%で運用した場合、単利と複利を比較すると
1年 | 5年 | 10年 | 20年 | 30年 | |
単利 | 1,050,000 | 1,250,000 | 1,500,000 | 2,000,000 | 2,500,000 |
複利 | 1,050,000 | 1,276,282 | 1,628,895 | 2,653,298 | 4,321,942 |
差 | 0 | 26,282 | 128,895 | 653,298 | 1,821,942 |
30年後の利益は単利の場合150万円、複利の場合は332万1942円となりました。このように同じ金額を同じ期間運用してもこれだけの差が生じます。
このことから、投資には長期運用がお勧めされているのです。目先の利益に踊らされずに長い目で見ていく力が必要になるのですね。
分散投資の重要性
投資におけるリスクを抑えるために分散投資というものが行われます。
これは1つの金融商品だけに投資をするのではなく、様々な金融商品に資金を分散させるものです。
投資の世界には「卵は1つのカゴに盛るな」という言葉があります。
卵を1つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合すべての卵が割れてしまう。しかし複数のカゴに分けておけば1つを落として卵が割れてしまっても他のカゴに盛った卵は無事で済むということです。
どれか1つが値下がりして損が出ても、他の金融商品で利益が出ていれば損失をカバーできるのです。
何をどの程度の割合で組み込むかは個人の資金状況や目標によって変わります。保有する金融資産の割合のことをアセットアロケーションといいますが、投資をするにあたっては非常に重要なものとなります。
それぞれの金融商品同士には相関関係があり、同じような値動きをするものや正反対の動きをするものなどがあります。
つまり同じような動きをするもの同士を組み合わせるとリスクは大きくなりますが、逆の動きをするもの同士を組み合わせればリスクは小さくなります。
相関係数は数値が+1に近いほど似た動きを、-1に近いほど逆の動きを、0なら関係ない動きをします。これらを参考に、リスクを抑えるためにはできるだけ逆の動きをする金融商品同士を組み合わせるようにします。
また、株や債券などの金融商品という枠だけでなく業種、地域などにおいても同じ値動きをするものがあります。
「銘柄をたくさん買ったから分散!」というわけでなないので注意しましょう。
時間分散によるリスク低減
金融商品や地域、業種の分散のほか「時間の分散」というものがあります。
株などの金融商品は常に価格が動いているので、一度に資金をつぎ込むと高値つかみしてしまうリスクがあります。
毎週、毎月など時間をずらして買っていけば長期的には価格変動のリスクを抑えることができます。
こうした時間分散を利用した投資方法の一つに「ドルコスト平均法」というものがあります。
ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法は「積立投資信託」「るいとう」「純金積立」などの金融商品でよく用いられています。
例えば投資信託を毎月1万円ずつなど決まった金額で購入していきます。
ドルコスト平均法のメリット
何口などの量ではなく、金額を固定するので価格が安ければたくさん買うことができますし、価格が高ければ少なく買うことになります。
この方法で長期運用を行うことにより、平均買付けコストを下げることが期待でします。
例えば次のような値動きをする投資信託を毎月1万円ずつ定額購入した場合と10口ずつ定量購入した場合とを比較すると
価格 | 毎月1万口 | 毎月1万円 | |||
1ヶ月目 | 10,000円 | 10,000口 | 10,000円 | 10,000口 | 10,000円 |
2ヶ月目 | 9,000円 | 10,000口 | 9,000円 | 11,111口 | 10,000円 |
3ヶ月目 | 11,000円 | 10,000口 | 11,000円 | 9,090口 | 10,000円 |
4ヶ月目 | 7,000円 | 10,000口 | 7,000円 | 14,285口 | 10,000円 |
5ヶ月目 | 13,000円 | 10,000口 | 13,000円 | 7,692口 | 10,000円 |
合計 | 50,000口 | 50,000円 | 52,178口 | 50,000円 |
毎月1万口購入した場合は50,000円で50,000口購入出来たのに対して、毎月1万円で購入した場合は50,000円で52,178口購入出来ました。
以上からドルコスト平均法を使えば1口当りの購入金額を安く出来てお得な事が分かります。(定量購入:1万口=1万円、定額購入:1万口=9,582円)さらにドルコスト平均法の利点がもう一つあります。
みなさん経験があるかもしれませんが、価格が下がれば「このまま止まらないのでは…」と弱気になって売ってしまったり、買うタイミングを逃したりします。
しかしドルコスト平均法で購入日や購入金額などのルールをあらかじめ決めておけば感情的な取引で失敗するという事もなくなります。
ドルコスト平均法のデメリット
万能に思えるドルコスト平均法ですが欠点があります。
価格が下がり続けて上がらなければ含み損が拡大します。また、右肩上がりで価格が上がるならば時間分散せずに、最初からまとめて買っておいた方が利益を得られる事があります。
こうしたメリット、デメリットをよく理解して運用しなければ機会損失など予想外の事態が発生してしまうので、よく検討することが大事になってきます。
アセットアロケーション(資産配分)を考える
分散投資を行う場合、必ずと言っていいくらいやらなければならないことがあります。それはアセットアロケーション(資産配分)です。
アセットアロケーションとは自分の資産を異なる複数の資産に分けることで、リスク低減などの効果が期待できます。
「卵は1つのカゴに盛るな」という話がありますが、1つの金融商品だけに投資してしまうと暴落した際には全てが全てがパーになってしまいます。
しかし複数に分けていれば1つがダメになっても、他が無事であれば損失をカバーできます。
これは非常に重要であり、投資の成否の8~9割がアセットアロケーションによって決まってくるといいます。
資産の分類
アセットアロケーションは同じようなリスクやリターンの特性を持つ投資対象ごとの分類(アセットクラス)で分ける必要があります。
- 日本株式(日本株、日本株の投資信託、国内ETFなど)
- 日本債券(個人向け国債、地方債、日本債券の投資信託など)
- 外国株式(外国株、外国株の投資信託、海外ETFなど)
- 外国債券(外国国債、外貨預金、外貨MMF、外国国債の投資信託、FXなど)
- 流動性資産(普通預金、定期預金、MRF)
- その他(不動産、REIT、バランス型投信、金、コモディティなど)
資産の組み合わせ
組合せの比率をどうするかは個人のリスク許容度によって変わってきます。
安全に運用したいならば低リスクの比率を高めに、逆に高いリターンを得るためにリスクを取った方法で運用することもできます。
アセットアロケーション作成の大まかな流れとしては
- 何年後にいくら必要なのかを明確にする
- いくら投資して、いつまでにどのくらい増やせばいいのかを考える
- その金額に達するための目標利回りを計算する
- その利回りを達成するために、どの資産にどれだけ分配するかを決める
分散投資はアセットクラスの中でも分散を行うことが大事です。
例えば株と一言に言っても業種ごとに景気で受ける影響が異なり、鉄鋼業や建設業が好調でも機械業やIT業が落ち込んでいたりします。
しかし、あれもこれも買おうとするとかなりの資金が必要となります。
そこで投資信託を用いることにより少ない資産で分散投資を行うことができるのでおすすめです。
投資信託ならアセットクラスごとに分散している商品が多数あります。
- 日本株式ならTOPIXや日経225をベンチマークとしているインデックスファンド
- 外国株式ならMSCI-KOKUSAI指数をベンチマークとしているインデックスファンド
それぞれを組み合わせれば管理も簡単になります。
リバランス
アセットアロケーションは一度作ったらそれで終わりというわけではありません。分散投資にはリバランスというものが必要になります。
このリバランスを行わないと、リスクを抑えていたはずがいつの間にかハイリスクになっていたということもあり得ます。
リバランスを行うことで効率的な運用が出来ると言われているので面倒くさがらずに実行しましょう。
リバランスのタイミングとしては、アセットアロケーションの配分比率から10%以上動いてしまった時、または2~3年の周期で行うのが良いようです。
売買時のコストとも相談してタイミングを図りましょう。
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